渡辺恒雄さんと言えば、今でも読売グループの事実上の領袖、長らく日本の最上層で、その存在感を縦横に発揮されておりました。
ただ、どうも、まだ我々は、その素顔を、あまり知らないのかもしれません。
そんな渡辺恒雄さんによる名言。
「将来有望なやつの不遇な時に取り入れ!」
人間にすがるなら、有能な人間に。
そして、人間というのはうまくいっている時に取り入ったところで、ありがたみを全然覚えない。
という、まさに帝王学です。
渡辺恒雄さんはよく知られている通り、東大出。
そして、もともとはごりごりの反戦家であり、共産主義者です。
ただ、戦後の世に、ジャーナリストとして当たり、いろいろと変化が起きていったようです。
そんな、渡辺恒雄さんの独白を見る機会があったのですが、私の感想としては、「頭はいいけど、ものすごく憶病で繊細な人だなあ」
帝王と思われているのとは真逆ですね。
弱く、心細く、ロマンチスト。
誰か自分の表と裏を上手く小説にでもしてくれないかな、というセンチメンタリズムすら感じ取りました。
弱いからこそ、ああなったのでは、と思わせます。
そして、そんな人間だからこそ、人間の本質がよくわかるのでしょう。
さにしても、渡辺恒雄さんというのは、戦後日本のかつての世代の象徴に思われます。
あれだけ、自由に肩入れしたのに、ある時、ファッと豹変し、当たり前に体制側の尖兵になっていそしみ続ける。
どちらが正しいとかではなく、極論に走りがちで、その異様な変わり身の鮮やかさ、と、無責任さ、ちゃっかりさ。
「戦後の後」はこうして作られたのでしょう。