
「コロンブスの卵」という言葉があります。
それはいったいどういう意味なのでしょうか。
そして、アメリカ発見でよく知られる探検家コロンブスとは実際どのような人だったのでしょうか。
確かにそこには「コロンブスの卵」エピソードにつながる何かを感じます。
「コロンブスの卵」とは

そもそも「コロンブスの卵」の語源となったエピソードはこちらです。
ある時、人々はコロンブスにこう言いました。
「アメリカ大陸なんて別にあなたじゃなくても誰でもできたじゃないか」
確かに。
西に航海すればやがて必ずアメリカ大陸に行き当たります。
航海士などコロンブスのほかに何人でもおります。
ところがコロンブスはひとつのゆで卵を見せてこう言います。
「これをテーブルに立てることはできますか」
だれがいくらやってもできません。
すると、コロンブスはゆで卵の尻をつぶしました。
ゆで卵は見事立ちます。
やり方をわかればだれでもできます。
しかし、やり方を編み出し、実際にやった、からその偉業は達成されたんです。
さて、実はこの話、コロンブスがやったという証拠はまったく残っておりません。
つまり、「デマだろう」ということです。
ただ、「コロンブスの卵」が立った理由。
コロンブスの人となりを知ると、「なるほどな」と妙に合点がゆくところがあります。
コロンブスの人となり
ガンコ

コロンブスはびっくりするぐらいガンコです。
「これ」と信じると徹底的にやりぬこうとします。
コロンブスはジェノバの一平民の生まれです。
航海士としてのたしなみはありましたが、まだ何も成し遂げていない彼になぜスペイン王室が新航路公開計画の“後援”を申し出たのでしょうか。
よくぞここまで売り込む度胸です。
ポルトガルでは正式な学者らに理詰めで「西回りで“インド”に着くのは無理だ」と諭されたこともありました。
しかし、コロンブスは揺らぎません。
「彼らの言うことが間違っている」
という信念です(※)。
(※)コロンブスは何の学位すら持ちあわせておりません。
航海に出て、いつまで経っても“大陸”が見えてこないので、船員たちに詰め寄られても、「帰る」なんてことはしません。
舵(かじ)をそのまま、まだ見ぬ大海原へと突き進むのです。
恵まれない生い立ち

こんなガンコさにはそれなりの裏付けがあります。
まずひとつは、退路はない、無理でも突き進むしかない、を地でいったその生い立ちです。
コロンブスはジェノバの毛織物職人の息子です。
幼いうちから弟子奉公もしているので普通ならそのまま静かな人生を送っていたはずなんです。
が、運命はそれを許しませんでした。
コロンブスの実家は事業に行き詰まり、大変な借金を背負います。
コロンブス十代で連帯保証人になったほどです。
しかし、コロンブス家は借金を返せません。
土地すら手放しています。
こんなみじめなコロンブスは毛織物職人で収まりつかず、海に向かうしかなかったのです。
自信家

そして、コロンブスはなかなかの自信家でもあります。
そうじゃないと各国の王室に売り込みなんてできません。
ただコロンブスにはそれなりのスキルはありました。
スキル1.東アジアについてやけにくわしい
もちろん、コロンブスは東アジアに行ったことがあるわけではありません。
ただ、いろんな書物を読み漁ったのでしょう。
ジパングのことや中国のことをまるで見てきたような知識があります。
スキル2.航海術はすごい!
コロンブスのおどろくべきはやはりその航海術です。
当時のかなりいいかげんな装備で、なぜかその場所を遠くから射貫くようにピタリと行きついて見せるのです。
提督ですが、自分で舵を握ることもあります。
どこからともなく嵐を予知することもできます。
また、大西洋からアメリカへの風の流れも確かにつかんでおり、本人の中では「行って帰ってこれる算段」がきっちりついていたのです。
不屈の使命感
彼は使命感もすごいものがあります。
いや、絶対世に名を残してやるんだ、という名誉欲でしょうか。
とにかく“自分が”出ないとダメだし、ちょっとやそっとの利益や名誉では納得しません。
晩年は失敗続きで、スペインからどんどん干されてゆくのですが、彼は何が何でも航海に赴いて見せます。
最後はボロ船だけあてがわれますが、なお強行し、帰りは難破しました。
ものすごい人間不信
彼は人付き合いが上手ではありません。
いや、私が言うのもなんですが、かなり下手です。
そしてやはり、相当な人間不信です。
彼は日記にこう書きとどめております。
「私は人から親切を受けたことはない。〇〇司祭と全能の神だけが例外だ」
彼にとって信じられるものとは鼻からごく限られているのです。
そもそも彼はかなり学者肌・職人肌の人間です。
探検部隊のリーダー、しかも命知らずの荒くれ船員たちの、というのは彼にとって相当な負担だったでしょう。
ただ、自分から率先してその道をひた走るのですが。
まとめ
いかがでしょう。
彼ならば「コロンブスの卵」を実演してもおかしくない、その絵が頭の中にすぐに浮かんできそうです。
- 「コロンブスの卵」とはだれもができそうなことでも、最初にやり方を発見し、やったことに意義があるのだ、という意味
- 「コロンブスの卵」をコロンブスが実演したというのはデマである
- コロンブスは、恵まれない生い立ちで、強烈な人間不信で、かなりの自信家で、使命感にかきたてられた、相当な頑固者だった
なお、よりくわしいコロンブス情報についてはこちら。