島原の乱というのは一揆方がことのほかに善戦したことでよく知られております。
◇信仰による固い結束
◇窮鼠ゆえの命知らずの奮迅
◇実は充実していた火力
◇幕軍・藩軍がなめていた
◇幕軍・藩軍の統制一致の欠如
◇原城の地の利
は明らかにありました。
が、忘れてならないのは、乱参加者にかなりの“手練れ”がたくさん混じっていたこと。
では実際に、彼らがどういう“手練れ”だったのかについてちょっと詳しく見てみましょう。
なぜ島原の乱一揆方に“手練れ”がいっぱい参戦したのか
幕府の権力強化への焦りでしょう。
江戸初期はまさに“大改易時代”でして、関ケ原合戦・大坂の陣への連座のほか、かなりたくさんの大名が毎年のようにバッサバッサと改易されました。
その数、開府以来40年足らずで50家以上。
当時の九州だけでも、小西家・加藤家・立花家……
また、島原の有馬家も日向に転封になり、そこであぶれた人も大量に出てきております。
やがて、彼らはほかの仕事に就いて、時が過ぎ……、となるのです。
当然ながら彼らの多くは“バリバリの実戦”を知る者たち。
また野に降ってから新たなスキルを身に着けてもおります。
それにくらべると、幕府方の現場将兵は関ケ原も大坂の陣も経験していないような者らがほとんど。
一見身分では
農民などの一般人 vs プロの武士軍団
ですが、中身はどっちの方がプロの武士なのかわかりません。
“かつての武士たち”の思い
あぶれた牢人たちはある者は百姓になり、ある者は商人になり、ある者は医者になるなどして一見平穏にこれから太平という世を過ごしているかに見えました。
ただかつては武士として天下に夢を賭け戦った人たちです。
そんな人たちが20年30年と年を経て、当時でいえば、もうかなりの老齢期です。
そして、ただただ日々便々と百姓、商人、医者などをやって生きながらえるばかり。
子・孫となるにしたがって「自分が武士として馳せていたころ」のことなんて知りもしないようになります。
さらに、体はじわじわということを聞かなくなり、寿命への意識も大きくならざるをえません。
そんな時に来て、島原や天草はおびただしい天災や失政続きで騒然としております。
「ようし、やってやろう」
とかつての血気が集団として湧き上がるのはものすごく自然なことだと思うのです。
一揆方主要参戦者スキルタイプ別紹介
侍大将経験者
島原の乱の首謀格には元有馬家・元小西家・元加藤家のしかもある程度以上高位の侍大将の名があります。
●蘆塚忠右衛門……元小西家臣、小西氏の主城である宇土城代を勤めた経験がある。
●森宗意軒……元小西家臣、小西氏の船宰領として朝鮮出兵に従軍
武闘系のプロフェッショナル・スキル保持者
もちろん、そもそも元武士が多いのですから、剣や鉄砲などのスキルを持ったものは多いです。
ただ、その中でもマエストロ級の人間がわかるだけでも結構目立ちます。
●森宗意軒……この人は本当に多芸です。当時、宗教戦争真っただ中であるヨーロッパを広く遍歴しました。火術や火攻めの法を帰りがけの中国で人に伝授するほどの技量です。
●駒木根友房……元島津・小西家臣。鉄砲の名手です。針の穴を通すほどで“下針金作”という異名を持っているほどだとか。幕軍最初の総大将板倉重昌を狙撃殺したのは彼だと伝えられております。
●大矢野松右衛門……本多忠朝の元剣術指南といわれます。父親が大坂冬の陣で戦死。松右衛門はこれをきっかけに本多家を致仕します。しかし、本多家からの報復を恐れ、天草で百姓になりました。
そのほかのスキル保持者
戦争をおこなうには当然、武器を取って戦う以外のスキルもなくてはなりません。
島原の乱参加者にはこういった貴重な戦力がわかっているだけでもたくさんおります。
●森宗意軒……この人はとことん芸達者です。ヨーロッパに渡り、医術を修めました。当時あちらの最新である“外科医療”はやはりふくまれていたでしょうか。
●田崎刑部……森宗意軒の弟子です。
●益田甚兵衛……天草四郎の父親です。元小西家臣祐筆。甚兵衛は小西氏滅亡後貿易で家を保ってゆきます。息子の四郎はおさないころ、長崎に学んだことがあったとか。天草の庄屋と血縁を結べるほどですので、なかなかの商売達者だった可能性は高そうです。物資調達、交渉能力において相当心強いでしょう。
●千束善右衛門……元小西供頭。関ケ原の戦いの時は大村氏・五島氏への使者を務めております。各村々を地下で説得し、つなげてゆく“交渉能力”はこの乱の決起ではかなり重要だったと思われます。
●山田右衛門作……元有馬家臣。南蛮絵師。一揆勢の軍旗を製作。
庄屋・百姓の存在も大きい
また、農民たちを取りまとめる村の庄屋格はたくさんおります。
また、彼らは村々間水面下におけるネットワークを形成するのにも重要です。
島原の乱があれだけ広範地域で一斉に蜂起できたのは、当然彼らならではの“術”と“尽力”が大いにあってのもののはず。
総大将は圧倒的カリスマ
そして、総大将は圧倒的カリスマ天草四郎その人です。