
サマセット・モームの『月と6ペンス』を初めて読みました。
とても素晴らしい内容だったので、ぜひこちらで紹介させていただきます。
サマセット・モーム『月と6ペンス』読書感想文
一応通俗小説作家とあって、わりと読みやすいです。
ただ、素晴らしいのはやはりこの小説のうまみ。
大いにアブノーマルな私にはかなりの癒しの書でした。
たとえば、この名言。
「生まれる場所を間違えた人々がいる。彼らは生まれた場所で暮らしてはいるが、いつも見たことのない故郷を懐かしむ。」
この先読み進めるとさらに沁み入るのですが。
また、
「人はなりたい姿になるのではなく、なるべき姿になるのだ」
どうでしょう。
私はここであらすじについてはほとんど触れません。
この作品を紹介するにあたってそれは明らかに興を削ぐことだと考えるからです。
どうぞ、その先はご自分で味わってこそ最良の味を。
では、こちらではそのあくまでイントロダクションを。
最初は主人公「わたし」から見た芸術論で始まります。
何やら滔々とまくし立てておりますが、私はこういうの、結構フェチです。
そして、現れてくるのがストリックランドというとても平凡でうだつの上がらない中年。
ただ、彼が全く思いがけない個性をその奥に秘しており、やがてそれが露わとなって、次から次へとドラマを引き起こし、読者を愈々と引き込みます。
重ねて言いますがサマセット・モームはさすがに通俗小説家。
ところどころに「ゴシップぽい表現」が目立ち、私的には少し鼻に付きます。
読み進めるのもうんざりとなりましたが、あくまでスルーしたのが幸いだった、と私は確信しております。
ただ、私のような未熟者からすると、作中の人間観察(特に男性)においてはかなり素晴らしい印象を受けます。
また、説明がやや冗長に思えますが、その辺は適当にサラッと流しました。
素晴らしいのは終盤です。
実はこのストリックランド、ある歴史上の著名人がモデルです。
その人の生涯をそっくり追うように行きついた果ては……
不思議なカタルシスに、「ああ、名著だな」という感慨を禁じえませんでした。
ちなみに表題の月とは「夢」を、6ペンスとは「現実」を表している、とのことです。
私とタイプの似てる人にはものすごくフィットし、大変な癒しを与えてくれる可能性があります。