中国に船で行く、あるいは、中国から船で帰る圧倒的メリット

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最近は日中の航空路が格段に安くなりました。

そのため、鳴りをかなり潜めつつある航海路。

ですが、旅好きにならその存在価値は依然衰えぬまま非常に高い水準にある、と思います。

私は中国に計3回行ったことがあります。

が、そのうち5回この海路を使用しております(私が使ったのはいずれも20年ほど前ですが、おおむねの内容は変わらないようです)。

すべて豪華客船とかそういうのではございません。

あちらはあちらの素晴らしさがあり、ニーズがあるでしょう。

でも、ここで推すのはあくまで普通の定期乗客運搬便

では何が一体いいのか。

私的にはこの一言に尽きます。

旅情。

また、ほかにも現実的なメリットもかなりあるのですね。

その辺についてまとめて紹介しましょう。

やっぱ中国は船で行く・帰るが最高!?

中国に船で行く、中国から船で帰る、のはむかしの日中往来者の追体験

歴史伝統的に日中の往来といえば船。

はるか遣隋使・遣唐使の昔からこの傾向はほぼ一貫しております。

つまり、もしフェリーで中国へ行くなら(帰りでもです)、どこかその風情を追体験できる、これは私的には禁じえません。

そう、私が初めて中国に海路入国したその時、その船はものの見事に大型台風に直撃しました。

近代大型船もまさしく猛烈な風と波浪にもてあそばれた木の葉一枚。

まあ、大揺れに揺れまして、若者男子の割合がかなり高い船内乗客のほとんどが船酔いでグロッキー状態。

ただ、これぞまさしく井上靖の『天平の甍』に描かれた通り。

やがて、嘘のように晴れわたる先に間違いなく待っているのはあこがれの大陸です。

私は金運と仕事運はからっきしですが、海外旅行運は異常にあります(※)ので、これぞまさしく天賦の感慨です。

(※)ピンチになってもいつもぎりぎり助かる。いい人やいい場所などと巡り合いやすい。

仮に飛行機なら、こういった旅情を味わえる可能性は限りなく0に近いです。

“速くない”魅力

飛行機には飛行機の旅情があります。

ただ、それはまさしくタイムマシーンに乗って、あっという間に異空間に旅立つようなもの。

船はちょっと違うのですね。

そこにある“隔絶”がかなり希釈されます。

海路で味わう自然のグラデーション

まず、自然

これはグラデーションのように移り変わってゆきます。

1日目

今の日中船の場合なら、出港するのは大阪南港神戸

かつて難波の津や兵庫の港から旅立つ時のあの汐(しお)の香。

港には出送りの人がまばらにいたりしますし。

で、出発となると、船は徐々に徐々に港から離れてゆくのですね。

船というのは加速がつくと案外速いもので、湾の船影やいくつもの島影を見る見る間に通り過ぎてゆきます。

で、まだ胸に高鳴るうちに甲板表に出てその“風”を存分に浴びると、なにかの映画ではありませんが、どこか天高く飛翔するようでもあります。

航路は瀬戸内から豊後水道を通るルートと紀伊水道から太平洋に出るルート。

私は“行き”に関しては紀伊水道ルートしか乗ったことがありません。

こちらでは視界が途中から急にグンと開けてきます。

すると、どことなく“旅に発った自分”というものを意識せずにおれなくなります。

↑夕日です。

で、やがてしっぽり暮れた宵闇に、だれかが「あ、あれ!四国の明かりなんじゃないの」なんて囁きだすのです。

もし運よく晴れわたっていれば、満天の星空はあなたのものとなります。

2日目

夏の日中晴れていると、こういう光景が目に収められる可能性は高いです。

黒潮(黒潮はリアルに黒い

トビウオやイルカが船と並走

 

で、“最後の夜”には時計の針を1時間ずらします。

3日目

↑黄色い海と青い海の境目が見えるでしょうか。帰りの船に乗れば見ることができるでしょう。

順当にいけば、早朝起きると、窓外の海の色はすでに黄色いです。

ちなみに私が初めて中国に行った時は、深い深い朝もやの中でした。

波音だけがさやかに、一寸先も見通せぬ中、船は黄色い水面を音もなく切り裂きながら進んでゆきました。

ただ、私が初めての時はそんな夢うつつも甲板に上がれば一瞬で醒めてしまいました。

正直「なんでこんな国に来ようと思ったのか」と身の毛がよだつ思いすらしたものです。

時代のせいもあるでしょうが。

何せ、そこにあるのは何億人分もの便所であり、あらゆる商工業汚水のはきだめにほかなりません。

海という概念をものの見事に打ち砕かれました。

いたるところから強烈に立ち込めて来るのはどこか油っぽくドロリとしたアンモニア臭です。

甲板にいる限り逃げ場すらありません。

ほかの人たちはみな平然としているように見えましたが、当時の私にはまったくもって信じがたい光景でした。

で、次第に長江の河岸がうっすらと見えはじめ(※)、日の明かりもくっきりしてくると、“現実”はよりだんだん鮮明となってくるのです。

(※)長江のかなり海寄りの河口部では向こう岸が見えません。「これは川じゃなくて海だろ」という世界です。

そう、それが真の“大中国”。

あまりに多くの人々とどこまでも悠久とした自然が織りなす躍動です。

そして、風景は見る見る間に都心部へと流れ移り、あの東方明珠塔の真下で船は完全に停まります。

……

が、ここから先です。

私はまったく思いがけずこの国のものすごい懐の深さをまざまざと思い知らされゆくこととなります。

“あれ”はそのための“洗礼”だったようです。

 

 

 

船だと“多文化の中間域”をじっくりと味わえる

船旅だと自然はグラディエーションですが、人や文化は“中間域”に飛行機よりじっくり浸れる、といった感じです。

じゃあ、“中間域”とは何か、というですが、これとよく似た言葉の表現にこういうものがあります。

“汽水域”。

海水と淡水が入り混じった水域のことです。

日本でいうと、浜名湖やサロマ湖、宍道湖など、そこには独特の滋味・豊かさがあることで知られております。

たとえば、日中フェリーの乗客は日本人、中国人、だけでなく様々な国籍の方が入り混じっております。

言語も然り。

食もまた。

物価もどちらとも言えません。

 

ロビーの大型TVには当たり前のように〇HKニュースがどこまでも模範的な標準語で流れています。

でも、ひとたび船室に戻れば、やはり当たり前に母と赤ん坊が訛りの強そうな中国語で寄り添いあっております。

新鑑真号なら2日目の夕食後に日中友好のカラオケ大会が開催され(※1)、双方の流行歌が当たり前に交わされる、しかし、まだお互いに距離がある(※2)、そのむずかゆさがまた何とも言えない好さだと私は感じます(※3)。

(※1)私が乗船した時は、必ず開催しておりました。ただ、場合によってはないこともあるかもしれませんので悪しからず

(※2)たとえば、グループは日本人だけ、中国人だけ、でよく固まりがちです。ただ、おたがいに交し合う拍手喝采は次第に盛況を呈してきます。

(※3)男女の仲と同じだと思います

そして、これが“これからいざ中国本土”への良い準備ステップにもなるでしょう。

飛行機で海外に入った場合、どうしても最初の数日は浦島太郎がいきなり竜宮城に連れてこられたみたいに「なんだか地に足がつかないふわふわした」感じとなることは多いですが、船旅で入ると最初から幾分リアルに入り込みやすいです。

船旅は長旅だが、雰囲気はわりと万人受けしやすいように思える

日中フェリーの場合、「みんなでワイワイやりたい人」「一人でじっくり船旅を堪能したい人」両方が割となじみやすいようになっております。

船室は1人部屋もあれば、大人数の雑魚寝もあり(※)。

(※)新鑑真号なら、貴賓室(2名まで/室)、特別室(2名まで/室)、一等洋室(4名まで/室)、二等洋室(8名まで/室)、二等和室(47名まで/室)。蘇州号もおおむねは似た感じです。

大人数でも洋室なら、カーテンでプライベート空間がそこそこしっかり区切られております(※)。

(※)二等洋室と二等和室は料金が変わりません。私は二等洋室派です

それに、先ほども記しましたが、乗客は日本人ばかりでも中国人ばかりでもありません。

そのあたりはインターナショナル、多文化な、独特の懐の深さと緊張感はあるようにうかがえます。

 

中国本土に入る前に貴重な旅情報を仕入れられる・旅仲間を作ることができる

そう、こういう現実的ツールとしても非常に有用です。

初めての中国、初めての海外の人には飛行機よりかえって有利かもしれません。

私自身そうでしたし。

特に若い人はたいがいすぐに船内に仲間ができます。

そうすると、ネットやガイドブックだけでは手に入らない情報にいろいろと触れることができるようになります。

さらには、彼らと向こうでの“旅の道連れ”となるのもありです。

上海だけもよし、最初の列車までもよし、そして、旅行者社会は案外狭いもので、向こうのどこかで思いがけずばったり、というのはよくあります。

特に中国本土に足を踏み入れたばかりのころはどうしたって不安が先走り勝ち。

そんな時に、行動を共にできる仲間がいるとどれだけ心強いかしれません。

あるいは、帰国後も長く付き合える友と出くわすことも稀ではありません。

今もある日中フェリー2航路

以前は大阪と天津をつなぐもの、長崎と上海をつなぐもの、石垣島と台湾など、結構選択肢があったのですが、これも時代です。

やむをえません。

もう日中の物価差がみるみるなくなった上に、格安の航空便が圧倒的多数往来するようになったのですから、こんな環境でなおもとても長らく変わらない料金で運営継続してくださるこの2社には心より感謝です。

(↓各社のホームページはこちら)

蘇州号(上海フェリー)

日中国際フェリー(新鑑真号)

両方、「学割」があるのがうれしいです。

さらに「往復」で買うといまだに格安航空券にも劣らぬ破格です。

「船の中でお金を使うと交通費が浮かない」「飛行機より時間がもったいない」と心配な方へ

おっしゃる通り、船の中ではそこそこにお金は使います。

また、本来2・3時間なのが2泊3日もかかってしまうのですから、時間がない人にはちょっと厳しいです。

ただ、時間に余裕がある人なら、こう考えることもできます。

というより私の場合、だからこそ、船旅が好きなのですが。

つまり、船に乗っている時間そのものが旅のうちではないでしょうか。

 

そう考えると、全然高くない、というのが私の持論です。

中国本土より幾分物価は高いでしょうが、それでも船内では食費以外ほとんど使い道がなく、中にはバーで高めのカクテルをいろいろ頼んだり、ゲームコーナーでお金をつぎ込みまくる人もいますが、それはその人の好みですので。

そして、船旅の出会いってなかなかしみじみしたものが多いです。

風景もそうですし。

また、これはほかでもそうで、たとえば、上海からラサまで飛行機でひとっ飛びするのもいいですが、その間をあえて乗りつぐ列車やバスや船の中で繰り広げられるいろんな体験に私は大変な滋味を感じます。

 

追伸

私もひさしぶりに海外に行きたい、そして、またこの航路に乗りたいです。

「次行くなら、中央アジア方面、あるいは、ラオス・タイ方面への起点に」「いっそイラン・南アジアも」などとはるかに夢想しつつ。

ああ、スナフキンみたいになりたい・・

(中国鉄道旅の特集はこちらの記事

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