ケインズ政策とは何か?20世紀前半3大国による光と影

歴史
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ケインズ政策とは大学の経済学部に入れば、まずはイの1番くらいに教えられるマクロ経済学の基礎です。

実は20世紀前半、そんなケインズ政策を積極的に取り入れた光と影を存分に味わった大国が3つあります。

それらの国々は

どんな経緯でケインズ政策を取り入れることになり

どんな成功と失敗を味わったのか

など、今後の世界経済とも無縁ではいられないであろう超重要政策について漫画のネーム風に簡単コミカルにまとめました。

ケインズ政策とは何か?20世紀前半3大国による光と影

引用wikipedia
↑ジョン・メイナード・ケインズ

(場所:教室内)

ケインズ「ちわーす。ケインズ・ゼミへようこそ。だれだ?くちびる分厚いっていってるのは。はい、静粛に。ちゅうもーく。今日はここに私の理論を学んだスペシャルな学生たちをお呼びして、スペシャルに私の理論を紹介してもらおうってわけ。ん、わかる?」

ケインズ「おや、何か言いたいことありそうな顔だね。ん、まず君」

シャハト「あいにくだが、私はあなたに一度会ったこともない。そして、あなたの意見を参考にしたという物証など全くない」

引用wikipedia
↑ヒャルマル・シャハト

フランクリン「まあまあいいじゃないか。それはここにいるみんなお互い様だ。世の中には言論の自由というものがある。君、なんでもかんでもそう抑圧的にやっちゃいけない。ハハハ。」

引用wikipedia
↑フランクリン・ルーズベルト

高橋是清「そうだね。シャハト君、もっとおおらかに。スマイルスマーイル」

引用wikipedia
↑高橋是清

シャハト「君はそうやって悠長だから“ああいう”ことになるんだぞ」

高橋是清「ええ、まあそれを言っちゃあ…」

フランクリン「シャハト君、君今のなかなかいいカウンターだ。シュッシュッて、ハハハ」(座りながらシャドウボクシングをする)

①ナチスドイツはケインズ的政策を前面に出し、一時大成功を収めた

ケインズ「はい、みんなちゅうもーく!」(分厚い書類で机をたたく)

ケインズ「今、君たちがキャラのまま好き勝手やってるから、見てる人がきょとんとしてるよ。ちゃんと自己紹介しないと。はい、まずシャハト君」

シャハト「はい、『ケインズ理論ぶっこみ隊員』ナンバー1番ヒャルマル・シャハトです。国籍はドイツアドルフ・ヒトラー政権の財務大臣をやっておりました。もちろん『ぶっこみ隊員』というのは大いに言わされてるだけであります!」

ケインズ「はい、次」

フランクリン「ハーイ。『ケインズ理論ぶっこみ隊員』ナンバー2フランクリン・ローズベルトでーす。ルーズベルトでもいいよ。ハハハ。国籍はアメリカ。実は下半身がほとんど動かない身体障碍者から大統領になりました。通算4期。わが国でこれほど長く務めたことのないウルトラ・カリスマでーす。ハハハ」

ケインズ「うん、いつものマイペースぶりは健在だね。じゃ、次」

高橋是清「はい。『ケインズ理論ぶっこみ隊員』ナンバー3高橋是清です。この見た目からだるまさんでよろしくね。国籍は日本。人間、何度失敗してもがんばれば起き上がれるよ」

ケインズ「はい、ありがとう。じゃ、早速ゼミを進行するよ。ではまず私の唱えたケインズ理論についてだれか説明してくれるかな」

フランクリン「じゃ、私が」(手を上げる)

ケインズ「うん、いいね。お願いするよ」

(場所:イメージ)

フランクリン「つまりね。世の中には景気というものがありまーす。景気の良い時は物がよく売れて悪い時はあまり売れません。その時に政府がたくさん介入して景気を安定させよう、というのがMr.ケインズの理論でーす。ハハ」(客がごった返している店、と、景気動向指数曲線、と、ガラガラのさびれた店)

(場所:教室内)

ケインズ「はい。その通り。で、実は私の理論を実践した有名な例がちょうど20世紀前半に3つあるんだね。君たちを呼んだのはほかでもないよ。さあ、では君たちがやったケインズ政策をドンとわかりやすく紹介してもらおう」

シャハト「わがドイツは第1次世界大戦に負けた後遺症が激しく、景気はどん底でした。そこで私の指示でやったのがこれらの政策です」

(場所:イメージ)

シャハト「不況の大問題は失業者である。彼らを大量動員してアウトバーン(高速道路)を作らせた。また、国防軍を強くするために失業者86万人も吸収した」(アウトバーン建設に働く人々、と、隊列を組んで右手をかかげている兵たち)

(場所:イメージ)

シャハト「ほかにもまだまだ。女性に結婚・家事手伝いをすすめて男たちを職場へとかりたてたり、職のない若者を田舎の農村で働くよう援助したり」(家事をする女性たち、と、畑を耕している若者たち)

(場所:教室内)

ケインズ「おかげでドイツは1932年から36年のたった4年間で国民総生産はなんと50%増。最近の日本での成長率が毎年1%前後なんだからこれがいかにとんでもないことかわかるよね」(黒板に差し棒を示す。黒板には『4年で50%』)

シャハト「(小笑)別に大したことはない。ま、経済の基本だ。基本」

ケインズ「どう?これ、政府がとってもバックアップしてるよね。まさにケインズ理論。ただね、気にならない?どっからお金出てくるんだろうって」

②アメリカはとてもケインズ的なニューディール政策で一時大幅に景気回復した

ケインズ「はい、じゃ次は2つ目。アメリカからフランクリン君、いってもらおうか」

フランクリン「OK。じゃ、行くね」

(場所:イメージ)

フランクリン「てか、ニューディール政策って聞いたことないかな。テネシー川流域での公共事業に大量の失業者を動員したり」(土木工事をする人々)

フランクリン「農産物の値段が下がりすぎないように生産統制したり。豊作貧乏って言って、採れすぎると安くてお金にならなくなるのよ。だから全米の綿花の4分の1をすきたおしたり、何百万頭の豚を殺処分したりしたこともあったんだ。何ともかわいそうな話だけれど、えてして世の中はこういう犠牲のもとに成り立ってるんだ。みんなニュースは表だけ流し読みだけれど、水面下ではいろいろあるよね。ハハハ」(綿花をすきたおしている人々、倒れている豚の横で嘆き悲しんでいる中年男女)

(場所:イメージ)

ケインズ「で、こっちもうまくいってね。一時は世界恐慌でどん底だった経済をほんの3年ほどで元の水準まで戻したんだ」

③高橋是清はケインズ的な方策を大胆に実行し、日本を不景気から救った

(場所:教室内)

ケインズ「で、最後の3例目。日本から高橋是清君だね」

高橋是清「ええ、わが国日本は当時深刻な昭和不況に襲われておりました。円高で日本製品が全然売れません失業が深刻となり、農村もボロボロ。貧しくて身売りする人たちもたくさんおりました」

高橋是清「そこで、私はまず日本の金輸出をやめさせました。そうすることによって円安になります。円安になると日本のものが安いから海外で売れやすくなるのです。だから国内の経済もよくなんですね」(黒板には、金塊の絵に×して『金輸出禁止』→『円安』→日本人男の前にたくさん衣服陳列、そこに群がりあさる外国人たち『日本製が外国で売れる』→T型フォードに乗りこむ紳士服の日本人男とモガファッション日本人女性に日傘をさす執事服の日本人老男『国内景気良くなる』)

(場所:イメージ)

ケインズ「で、是清君はほかにもリフレ政策って言って、軍事などに大規模な公共事業を興して経済を活性化するんです」(軍需工場で働く人々)

④独米日の3国はみんなケインズ政策に行き詰まり、戦争に活路を求めた

(場所:講義室内)

ケインズ「さてここまで見てきてどうですか。『みんなうまくいってるじゃん』って思いました?ではでは、ここからケインズ理論の第2幕です。その後みんなどうなったでしょう。さっき、ドイツのところでちょこっと言ったけど、あれだけ大規模なお金、突然どこから出てきたんだろうね。そう、借金です。やり方はそれぞれだけれど、みんな色々と工夫して何とか予算を通します」

シャハト「うちはメフォ手形だ。いわゆる何でも借金手形みたいなのかな。ほぼ〇エモンの秘密道具の世界みたいに聞こえるかもしれないが。コホン。でも、お金ってそもそも人間が『紙切れをお金ですよ』って作り出したもんだから、やりようによっちゃいろいろできる。うちは不景気だからいっぱい刷ったんだけれど……」

ケインズ「けれど…?」

シャハト「けれど、うちの(ヒトラー)閣下がもう収まらなくなって刷りたい放題。いや、やばいですよ。って言っても聞かないんだ。で…」

ケインズ「で、どうなっちゃたの?」

フランクリン「先生、わかっててなかなか酷なこと聞くね」

高橋是清「はーい。シャハト君は閣下にクビにされちゃいましたー」(シャハト、自分の顔を両手で覆っている)

シャハト「うるさい。で、お前らの国はどうなったんだよ」

ケインズ「はーい。じゃあ次はアメリカね。フランクリン君フランクにどうぞー」

フランクリン「え?うちはね。あの…景気良くなったと思ったんだ…」

シャハト「で、どうなった?」

フランクリン「ちょっとニューディールのペースをおさえたんだよね。ほら、借金がすごすぎることになるから」

シャハト「で?」

フランクリン「いーや、やっぱうまくいったかな。ほら、世間ではニューディール政策ってうまくいったって言ってるじゃなーい」(口笛を吹く)

シャハト「は?うまくいってるだ?ウソこくんじゃねえ!お前らの国だってまたソッコーで不景気に舞い戻り、結局成果らしいものなんて全然出てねえじゃねえか」

高橋是清「まあまあ、シャハト君。全然なんていいすぎだよ」

シャハト「結局お前らは!」

(ケインズ、書類で机をたたく)

ケインズ「はい、その続きはあとで。じゃ、先に日本の様子を是清君に語ってもらおう」

高橋是清「はい。わが国でも実はもう景気がだいぶ直ったし、もうあまり借金増やす公共投資はやめよう、っていう風にもどそうとしたんです」

ケインズ「で、どうなったの?」

(場所:屋内)

高橋是清「5・15事件が起こってしまいました。軍部の暴走です。私は彼らによって暗殺。『彼らの予算を減らそうとしたことへの逆恨みだ』と強く言われております」(血を流し倒れている)

ケインズ「当時の犬養毅首相は『話せばわかる』って言ってたけど全然話してすらもらえなかったね」

引用wikipedia
↑犬養毅

(場所:教室内)

ケインズ「さて、その次第3幕。で、この3国がにっちもさっちもいかなくなって結局どのように突き進んでいったかというと…」

(場所:イメージ)

ケインズ「戦争です」(発射するドイツⅢ号戦車、と、突撃するドイツ陸軍装の兵たち、と、空飛ぶHe111爆撃機、と、海面に出たガトー級潜水艦、と、敬礼するアメリカ海軍装の兵たち、と、キノコ雲、と、日本の出征式の様子、と、空飛ぶゼロ戦)

⑤ケインズ政策はとても有効な面があるが、副作用には十分注意しなければならない

(場所:講義室内)

ケインズ「結果はもう知ってるね。アメリカが勝利しました。ドイツも日本も負けたね。なんだかニューディールが成功して、ドイツや日本のやり方が間違いだった、みたいに教えられるけど、ここまで見てどう?経済の勝ち負けってたんに戦争に勝ったか負けたかだけじゃん」(黒板に『アメリカ勝ち』『日本・ドイツ負け』と書いてある)

ケインズ「そして、オレの言ったケインズ理論って一時期ムリする分、そのツケがどっかに回ってくるわけ。それを覚悟してうまくやんないとってこと」(黒板には『ムリ⇒ツケ』と書いてある)

ケインズ「ねえ、今の君たちは大丈夫?」

⑥ケインズ政策は比較的長いスパンから見てうまくいっている場合もある

ケインズ「ただね。一応言っとくけどわがフランクリン君の母国アメリカはね。80年代にレーガノミクスってのをやってね。オレの理論に近い形をかなり前面に出して大成功したんだ。そのかわり借金もものすごかったんだけれどね」(レーガン元大統領の肖像、と、プラザホテル、と、80年代ディスコの様子、と、煙を上げて発進するF-14Tomcat戦闘機)

(場所:イメージ)

ケインズ「それが90年代になって花開くんだ。レーガノミックスで種をまいたIT分野なんかが育って好景気がやってくる。90年代のアメリカは世界で一人勝ちだからね。あんまり調子よくてまっ赤っ赤だった財政も立て直っちゃった」(クリントン元大統領の肖像、と、パソコンを操作する人、と、グランジファッションの男女グループ、と、野茂のトルネード投法)

閉講

(場所:イメージ)

ケインズ「経済って奥が深いよね。以上、くちびる分厚いケインズから。一同きりーつ」(ケインズ、シャハト、高橋是清、起立)

ケインズ「礼!」(シャハト、フランクリン、高橋是清といっしょに礼)。

ケインズ、シャハト、フランクリン、高橋是清「ありがとうございましたー!」

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